運河を駆ける庶民の足


バンコクにフィールドワークに行っていたある日の朝、そろそろ起きようかと考えていた午前9時頃、携帯電話が鳴りました。タイ人の友人からの電話でした。
「きょうは何か予定あるの?ないなら映画を見に行かない?バンカピのザ・モールで10時30分に会いましょう」
ん? バンカピ? どうやって行けば良いの?
「船に乗れば簡単だよ。プラトゥナームに船着場があるでしょ?あれに乗れば簡単に来れるから。」
あ、そうか。船か。OK。じゃ、10時半ね。
電話を切った後、だんだんに目が覚めてきて、そんな船に乗ったことがないなぁと、やや不安になりました。が、もう考えている時間もありません。とにかくすぐに行かないと約束の時間に間に合わないので身支度を整えて出発です。このとき、国立競技場の向かい側にあるアパートに住んでいたので、まずはプラトゥナームまで、どう行くかを考えなくてはなりません。歩けなくもないですが、30分以上の時間がかかる上に暑いので、この選択肢は選べません。BTSでChitLomまで行って、プラトゥナームまで歩くという方法も考えましたが、これも結構歩く距離があり、時間がかかります。結局、タクシーでプラトゥナームまで行きました。

船着場は運河(San Saeb運河)の両側にあります。そうです。どうやら、ここは東方向に向かう船と西方向に向かう船の始発になっているようです。最初、なんとなく降りてしまった船着場は運河の北側でした。よくよく考えると、船は右側通行が原則です。つまり、北側というのは、西方向に行く船に乗るための船着場。階段を下りてすぐ、そのことに気づき、反対側の船着場に行きました。
すると既に船は停泊中。お客さんも20人ほど、乗っていました。果たして、これがバンカピのザ・モールまで行くんでしょうか。なんだか3人ほど、お揃いのポロシャツを着ているおじさんが船着場の端にいたので、きいてみたところ、どうやら行くようで、船に乗れと言うので乗ってみました。
船には板で作った椅子が設えてあって、みんな真ん中から座り始めます。その理由は、船が走り出すと、水しぶきが飛んでくるため、なるべく被害が少ない真ん中に陣取ったほうが良いということなんだと思います。しかし、実際に乗っていると、途中にとまる船着場は、左右、どちらの場合もあるため、乗客は左右どちらからも乗ってきます。人が乗ってくると、自動的に横方向にズレて詰めてあげることになり、最初に中心にいても、だんだん、どちらかに寄ってしまうこともあります。

船の中を見ると、何やら両側に座っている人の中に、紐をひっぱっている人がいます。この紐を引くと、船体に沿って張ってある青いビニールシートが上に上がる仕掛けになっています。船が動き出すと、これをひき、水しぶきが船内に飛んでくるのを防ぐ仕掛けになっているようです。しっかりとひっぱってシートを上に張れば、かなり水しぶきは防げますが、乗降客がいるたびに、これを下まで下げるので、上まであがっていないこともあり、そういうときに限って、激しく水しぶきがあがったりします。

プラトゥナームからバンカピまで16バーツ。時間は30分ほどだと思います。なかなか便利な乗り物ですが、水しぶきがかかる確率はかなり高く、しかも、この運河の水はかなり汚いことは覚悟する必要があります。また、雨の場合にも、かなり乗り心地が悪いと思います。おススメは、天気が良い日のラッシュ時以外の時間帯。タイの庶民の足を体験することができます。

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