バンコクのタクシー


バンコクの中心部にはタクシーがたくさん走っています。流しのタクシーもいれば、ホテルの前で客待ちをしているタクシーもいます。日本と同じように、雨が降るとタクシー需要が一気に高まり、タクシーをつかまえにくくなりますが、雨のときと早朝以外はだいたい簡単につかまえられます。初乗り料金は35バーツ(約100円)。400メートルごとに2バーツずつ加算されていくほか、低速走行(停止)中には時間単位で加算されるというのは、日本と同じようなシステム。バスは5バーツで乗れてしまうので、それに比べると高い乗り物です。でも、日本人も含めた外国人観光客にとっては、それほど高い乗り物ではないし、タイ人も、かなり気軽に利用しています。僕が以前働いていたエカマイのオフィスの隣に高校がありましたが、そこの高校生の中にはタクシーで校門に乗り付けている生徒もいたほどです。
しかし、バンコクのタクシーはキケンとも言われます。タクシー強盗、レイプなどの事件も少なからず発生しているようです。そこで、きょうは、バンコクのタクシー事情をまとめておくことにします。

■個人タクシー
バンコクの街を歩いていると、車体を色々な色に塗られているタクシーを見ることができます。その中でも、車体の下半分を緑、上半分を黄色く塗っているタクシーをとてもよくみかけますが、これが「個人タクシー」です。この個人タクシーという言葉に、日本人は「信用できる」という先入観を持つ傾向がありますが、タイの場合、まったく逆と思っておいたほうが良いほど、日本での先入観はキケンです。
個人タクシーは、会社に所属しているというわけではなく「個人」でやっているタクシーということに過ぎません。日本のように、長年タクシー運転手をして、安全運転で云々ということは、まったく関係ありません。単なる個人経営タクシーなのです。しかも、この黄色と緑のタクシーは、簡単に借りることもできるそうで、誰でもすぐにタクシー運転手になれるというわけです。そして、この個人タクシーの車は、又貸しされていることもあるため、何か事件があっても、後述するタクシーナンバーだけでは運転者を特定することができないという問題もあります。
もちろん、個人タクシーでもマジメにやっている人はいます。社内をきれいにしている新車の個人タクシーに乗ったこともあります。が、そうでないことのほうが多いような気がします。そこで、最近、僕はなるべく他の色のタクシー(会社によって営業されているタクシー)に乗るようにしています。

■会社によって営業されているタクシー
代表的な会社営業タクシーは、下半分が赤、上半分が水色のツートーンの車体。上記個人タクシーの緑と黄色のツートーンと、この赤と水色のツートーンはバンコクの街中でよく見かけます。最初、こんなにたくさんの車を持っているタクシー会社なのかと思いましたが、どうやら、そうではなく、タクシー会社の多くが同じ色に塗った車を使っているようです。
しかし、会社営業のタクシーの車体の色は、この赤と水色のツートーンカラー以外にもいろいろあります。車体を水色一色で塗ったタクシー、黄緑色のタクシー、紫のタクシー、オレンジのタクシー…いろいろな色のタクシーが走っていますが、これは皆会社営業のタクシーです。多くの場合、タクシーは車体の屋根の部分に”METER”と書いたものを付けて走っています。これと車体の色で、一般車と一緒に走っていても見分けがつくというわけです。
■タクシーの止め方
流しているタクシーをとめる場合には、腕を斜め下に出します。日本のように上に上げても止まってくれるでしょうが、タイの人たちは、そんなに派手に手を振ったりはしていません。すっと、体側から腕を斜めに出してタクシードライバーに合図すると止まってくれます。
■乗ってはいけないタクシー
ホテルや観光地の周辺で、路上駐車したりしながら、だら~っとして客待ちをしているタクシーは、やめたほうが良いでしょう。声をかけてくる場合もありますが、相手にしてはいけません。行き先を告げると、「200バーツ」とか「300バーツ」とか言うタクシーは、プチぼったくりタクシー。(バンコク中心部からドンムアン空港まで200バーツくらいで行けますから、バンコク中心部での移動で100バーツ以上かかることはあまりありません。)
バンコクのタクシーは、メーターが付いていて、本来、メーターで料金を請求することになっています。が、メーターが壊れているとか言い訳をしながら、高い料金を言ってきます。他に選択肢がない、タクシーがつかまらないなどの場合、仕方なくそういうタクシーに乗らなくてはならないこともあるでしょうが、そういうときは、メーターを使うように交渉してみたり、値切ってみたりしてみるのも一つの方法です。この辺のかけひきは、屋台で物を買うときに値切るのに近いので、得意な人、不得意な人がいるでしょう。でも、他にタクシーが来ないような場所では、向こうが優位なので、他の交通手段を使えない日本人としては潔く(?)妥協すべきときもあるかも知れません。
僕が住んでいたマンションは、ホテルとくっついていたため、よく敷地内の道路をダラダラと流していくタクシーがいましたが、よく見ると、いつも同じタクシーが走っていました。乗ろうとして行き先を告げると、メーターでいく場合の4~5倍の料金を言ってきます。外国人観光客を狙った、プチぼったくりを専門にしているタクシーです。
ふつう、ホテルの玄関前からタクシーに乗るときは、ホテルマンはそういうタクシーは避けて、ちゃんとメーターで行くタクシーに乗せてくれるはずです。ですから、ホテルに泊まっているときには(泊まってなくても大丈夫だけど)、ホテルのドアマンとかベルボーイにタクシーを頼むと、ちゃんと流しのタクシーとか、怪しくないタクシーをみつけてくれます。さらに、良いホテルでは、お客さんが乗車するときに、タクシーナンバーをメモに書いて渡してくれます。
タクシーナンバーはタクシー後部座席のドア内側に書いてある番号です。以前はタイ文字と数字の組み合わせしか書かれていなかったため、外国人はタイ文字が読めず、あまり役立ちませんでしたが、2004年頃からタイ文字2つに、アルファベット1文字が並記されるようになりました。外国人はこのアルファベットのほうを覚えたりメモったりしておけば、後でトラブルがあった際に、警察に通報することができるというわけです。

■高速で数字が上がっていくメーター
乗ってはいけないと言っても、乗ってからわかる問題タクシーの一つが、すごい速さでメーターの数字が増えていくタクシーです。これは乗ってみないとわからないのですが、乗って走りだして1ブロック走ったくらいでメーターが上がるので、メーターを注視していれば、すぐにわかります。僕は、これまでに3回、このようなタクシーに乗ったことがあります。いずれのときも、あまり遠くまで行くわけではなかったので、目的地の近くまで行ったところで降りました。もしも目的地が遠かったら、すぐに降りて別のタクシーに乗った方が良いでしょう。このような運転手と「あなたのタクシーメーターがおかしいよ」と言ったところで、とぼけられるか、逆ギレされるか…とにかく、こんな仕掛けをしている運転手は危険人物でもあると思いますから、数十バーツを惜しんではいけません。
■英語は通じない
ところで、タクシーに乗ったら、まずは行き先を運転手に告げるわけですが、ここが大きな問題です。ほとんどのタクシーの運転手は英語ができません。たまに英語の勉強をしていたり、日本語で話しかけてくる運転手もいますが、ほとんどの場合はタイ語の世界です。行き先が有名な観光地・場所だったり(例「ワールドトレードセンター」「ワット・ポー」など)、行き先の住所が数字の通り名だったりする場合(「トンロー、ソイ15」とか)は比較的わかりやすいのですが、大きな建物でもタクシー運転手が知らないこともありますので、ホテルに滞在している場合には、タクシーに乗る前にホテルの人にタイ語で行き先を書いてもらうか、あるいは運転手にタイ語で言ってもらうと良いでしょう。(ホテル玄関にドアマンがいるようなホテルでは、ドアマンのほうから行き先を尋ねてきますから心配は要りません。)
注意しておきたいのは、タイ語に入っている英語の単語は、独特の変化をともなって発音されているということです。考えてみれば、日本語だって、英語をカタカナにしてカタカナ発音しているので、外人には分からない発音になってしまったりするわけですが、同じことがタイ語でも起きているのです。例えば、Centralというデパートがありますが、日本人はセントラルと発音するのに対して、タイ人(バンコク方言)はセンターンと発音します。このようなわけで、タクシーに限ったことではないのですが、タイでは簡単な英語でコミュニケートしようとしても通じないことも多々あるので、なるべく英語がわかるタイ人に頼んで、タイ文字で行き先を書いてもらうか、ガイドブックの中のタイ語を指さしてみると良いと思います。

■タクシーのチップ
チップについては、いろいろな考え方があると思いますが、僕はたくさんチップをあげる必要はないと思っています。例えば、メーターに出ている料金が41バーツだったら、45バーツあげれば良いし、57バーツだったら60バーツをあげれば良いと思っています。タイ人の若い人などは、たとえば、51バーツのときに「50バーツでいい?」って言って、1バーツまけてもらうこともあるくらいです。僕も同じように端数が1バーツのとき、たまたま小銭が1バーツしかなく、ちょうどであげようとしたら、1バーツ返してもらったこともあります。ただ、運転手の中には外国人からはたくさんチップがもらえることを期待している運転手もいて、やはり同様に、他に小銭がなく、料金ちょうどになるように1バーツも付けて渡したら、1バーツ硬貨は嫌いだと文句を言い、その挙げ句に1バーツ硬貨を投げ返してきた運転手もいました。
チップは、受け取る方も、あげる方も、人それぞれの考え方なので、一概には言えませんが、僕の場合には、メーターの料金が100バーツ以下の場合には5バーツ刻みでメーターの料金に数バーツを足した金額を渡し、メーターの料金が100バーツ以上の場合には10バーツ刻みで、同様にチップも含めた金額を渡すようにしています。
■急ぐならBTS&地下鉄
タクシーのことを書きましたが、もしも目的地がBTSスカイトレインや地下鉄の駅の近くの場合、スカイトレインや地下鉄を使った方が早く目的地に着くことが多いです。特に、午後3時~8時くらいのバンコク中心部は、渋滞がひどくなります。急いで行くつもりでタクシーを使うと、とんでもなく長い時間をタクシーの中で過ごすことになりかねません。渋滞する時間帯には、出発地に近い駅に行くまで、あるいは目的地に近い駅から目的地までをタクシー利用して、途中をBTSスカイトレインや地下鉄を利用すると、金額的には高くなることもありますが、速く目的地に着きます。