自殺報道について

このブログは、タイの話題を中心としていて、あまり時事ネタを書くつもりはないのですが、最近、いじめを原因とする自殺の報道がとても多くて、気になるので、少しだけ書いておきたいと思います。

まず知っていただきたいことは、自殺報道をすると、それを真似た自殺が起こります。

そのため、自殺報道のありかたについては、マスコミ各社で話し合って、自主規制のガイドラインを作って欲しいと思います。これは人の命にかかわることなので、マスコミ企業は企業としての利益よりも人命を優先して、積極的に自殺報道のありかたを考えて欲しいと願っています。

アメリカでは、もう数十年前から、新聞の1面には自殺に関する記事を掲載しないと決めている新聞社があります。そのような動きのきっかけになったのは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のDavid P. Phillips教授の研究です。Phillips教授は、綿密な統計分析から、新聞の1面に自殺報道が載った後数日間の自殺件数が顕著に増加することに気づきました。また、自殺報道の後の交通事故、航空機事故の発生件数が増加することもわかりました。つまり、事故と思われていても、本当は自殺であるということも発生している可能性があるわけです。

David P. Phillips教授の論文はたくさんあると思いますので、ここでは詳しくは言及しません。上記のWHOの自殺防止に関する出版物にも、David P. Phillips教授の論文が含まれているようです。

マスメディアは、自殺報道について、慎重に考えなくてはならないと思います。そのことを、マスコミも、厚生労働省も、誰も考えていないのか、自殺が起きると、センセーショナルな事件として取り上げ、ワイドショーで連日、朝から晩まで報道されています。これでは、「死にたいと思っているあなたもどうですか?」と言っているようなものです。

僕は学部の頃、社会学を専攻していました。ある夏休み、UCSDの夏期講習でDavid P. Phillips教授の授業を受ける機会がありました。「自殺論」と題するPhillips教授の科目は単に理論を論じているだけでなく、公に発表されている統計数字を使った分析がふんだんにあり、社会学の面白さに興奮したことを覚えています。夏休みの1ヵ月ほどで大量の文献を読んでレポートを数回書くという課題は、かなりきつかったですが、僕の尊敬する社会学者の1人です。

せっかく、このような研究があるにもかかわらず、そこで得られている知見を日本社会が活かせてないことは口惜しいことです。このことを、1人でも多くの方に気づいていただいて、早く、皆で自殺報道のありかたについて考え、対策の検討を進めて欲しいと思っています。

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