「SIMロック」という言葉があります。
聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
SIMロックというのは、携帯電話の端末側に、ある特定の携帯電話サービス事業者のSIMだけが使えるように細工することです。つまり、Vodafoneで販売した携帯電話なので、Vodafoneでしか使えないようにしてあるということです。
それはそうですよね。
44,000円もの報奨金を払って、ショップにも安く売ってもらっているわけですから、Vodafone以外の携帯のSIMカードで使えちゃったら困るんです。
ところが、このSIMロックというものを解除すると、他の携帯電話会社のSIMカードでも利用できるんです。そして、そのことに気づいた人たちが、大量にVodafoneの携帯電話を買って、SIMロックを解除して海外でGSM携帯電話として売るということをしたのです。
バンコクのMBKには、そうやって流れてきた日本のVodafoneの携帯端末がたくさん売られています。そこで、件の女子大生は僕に、日本では携帯電話がいくらで買えるかと聞いてきたのです。
ところが、2006年10月からVodafoneはSoftbankに変わりました。
そして、Softbankになって一番変わったことは、携帯電話端末の購入のシステムです。簡単に言えば、新規で購入する場合には2年ローンで購入するようなシステムです。2年間の特別な契約を結べば携帯電話は1円を『頭金』として購入でき、ローンの部分も割引がきくのです。つまり、2年間、ちゃんと基本料金を払ってくれれば1円で売ってあげよう、というシステムになったのです。
これは、あきからに、購入後、すぐに解約してSIMロック解除してGSM端末として売るという商売に対抗する措置だと思います。この2年契約が嫌なら、端末の定価(たとえば、705SHなら54,700円?)を一括購入として支払えば良いことになります。また、2年契約を途中で解約する場合には、残金を精算しなくてはならなくなります。つまり、すぐに解約して海外に売り飛ばしても、儲からない仕組みに変えたのです。
このように、以前からVodafoneのGSM対応の携帯電話の端末を持っている人は、SIMロックを解除すると、タイに行ったとき、その携帯端末にタイのプリペイド式のSIMを入れて利用できるわけですが、Softbankになってからは、そのようなことをしても、儲けることはできなくなりました。(お金儲けとしては意味がなくなったということで、個人ユーザーとして、日本でもタイでも同じ端末が使えたほうが便利だと思って、自分の携帯をタイでも使えるようにするということは可能です。)
また、このSIMロックの解除ということにしては、違法性を指摘する声もあるので、この記事では皆さんにそういうことをすることをおススメはしません。僕個人としては、SIMロック解除の方法によっては違法とは言えないのではないかとも思いますが、やり方によっては著作権侵害する可能性もあるので、おススメはできないと思っています。
しかし、そもそも日本の携帯電話端末の販売方法が、セコイ気がします。
SIMロックをかけて、自分の会社のユーザーとして縛り付けておきたいのかも知れないですが、そういうことはサービスの質で競い合って欲しいですね。僕としては携帯電話端末は高くても仕方ないと思いますから、そのかわり、SIMフリーの端末を発売して欲しいです。電話番号を変えずに他の会社に乗り換える(MNP)なんてサービスが増えても、僕にはあまり意味がありません。
また、10月12日にドコモが発表する903iシリーズが、全機種GSMに対応という話を聞きました。ということは、これらの機種も、SIMロック解除できれば、海外に流れる可能性が高いと思います。もちろん、携帯電話サービス事業者も、どんどん、このSIMロックを解除しにくくしているとのことで、そう簡単に海外に流すことはできないかも知れませんが、こんな話を聞くと、昔、パソコンソフトにコピープロテクトをかけることが流行し、一方では、そのプロテクトを外してコピーするソフトが供給されていたことを思い出しました。SIMロックをかけたり、それを解除するソフトを作ったり、そんなことが行われているということは、今のやり方に、どこか無理があるということではないでしょうか?携帯電話の端末は端末で自由に売買できるようして、電話サービスは電話サービスの質で競争するということが、健全なビジネスのような気がします。
日別アーカイブ: 2006年10月9日
日本の携帯電話をタイで使う!? ~その2~
Vodafoneは親会社がヨーロッパの会社です。
そのため、ドコモやauよりも早くGSMへの対応を始めました。
近年、Vodafoneから発売された多くの携帯電話はGSMに対応していました。
つまり、そういう携帯電話を持っている人は、海外に行く場合に、そのまま携帯電話を持っていけば、現地で電源を入れるだけで国際ローミングを利用できてしまうわけです。
これは音声通話だけでなく、メールなども海外で読むことができるので、料金のことを考えなければ、日本にいるときのように携帯電話を利用することができてしまうわけです。
ということは、よく海外に行く人にとっては、このようなGSM対応の携帯電話がとっても便利ということになります。しかし、国際ローミングの料金は安くありませんから、実際によく利用する人はビジネスユーザーなのではないかと思います。
そこで、頻繁にタイに行く人は、現地でGSM携帯電話を購入して、現地のプリペイド式のSIMカードを購入しています。現地でGSM携帯電話を買うと、安いものでも1万円、高いものは10万近くするのですが、プリペイド式のSIMを手に入れれば、通話料は格安になります。タイの物価水準の料金体系ですから、国際ローミングとは比較になりません。
でも、海外では携帯電話の端末はかなり高いのです。
日本では、よく量販店で1円とか10円とか、破格の値段で売られていますが、海外ではそんなことはありません。では、なぜ、日本では安く携帯電話の端末が売られているのでしょうか?
理由は簡単です。
日本では携帯電話の端末を売っているのは、携帯電話サービス事業者、つまり、ドコモとかVodafoneとかauなのです。そして、これらの会社は、毎月の基本使用料と通話料で儲けることができるという前提で、携帯電話端末を安く販売することができるのです。
というか、実は、もうちょっと事情は複雑なのですが、Vodafoneを例にとると、携帯電話ショップが新規のお客さんを1人獲得して携帯電話を販売した場合には、Vodafoneからショップに対して報奨金が支払われます。(2006年第1四半期には1台につき44,000円支払われたという情報を読んだことがあります。)
つまり、ショップには店頭販売価格とこの44,000円が売上となって入ることになります。
Vodafoneは、この44,000円を、その後の毎月の基本料金で回収しようと思ったわけです。
ところが、GSM対応の携帯電話にしたことで、その思惑がうまくいかなくなってしまったのです。
日本の携帯電話をタイで使う!? ~その1~
先日、タイの友だち(某国立大学在学中の女子大生)からメールが来ました。
「ノボくん、Vodafoneの703SHを日本で買うといくらですか?」
メールには、もっと詳しい事情が書かれていたんですが、その話に入る前に背景事情について簡単にお話したいと思います。
まず、知っておかなければならないのは、日本の携帯電話は、世界の携帯電話事情から見ると特殊だということです。これまでは、日本の携帯電話は日本でしか使えないものでした。
一方、海外の携帯電話は、GSM(Global System for Mobile Communications)という規格で作られていて、アジア、ヨーロッパを中心に100カ国以上で同じ規格を使っています。
そのため、ヨーロッパやアジアでは、基本的に同じ携帯電話が売られていました。携帯電話の端末はふつうの電気製品のようにハードウェアとしてお店で購入して、携帯電話サービス事業者とは、別の方法で契約をして、その結果、SIMというICカードを手に入れて、それを携帯電話端末の中に入れれば使用できるという仕掛けになっています。
ときどきヨーロッパからの旅行者がタイで自分の電話を使って通話をしているのを見かけてたりしますが、これはタイでレンタルの携帯電話を手に入れたわけではありません。(たまには、そういう人もいるでしょうけど。)これは、『国際ローミング』というサービスを利用しています。
例えば、ドイツの携帯電話会社とタイの携帯電話会社が提携している場合、そのドイツの会社の電話番号を使っている携帯電話を持って、タイ来ると、そのままドイツで使っていた携帯電話を使って、電話を受けたり、電話をかけたりできます。
このように、海外に行って、その土地の携帯電話会社のネットワークを使って、自分の携帯電話を使うことをローミングと呼んでいます。
このとき、携帯電話の番号も、携帯電話の端末も、ドイツで使っているものをそのまま使えるというのが、同じGSM規格同士のローミングの特徴です。
この場合の料金はどうなるのか・・・
通常、このドイツを例にとると、ドイツの友だちがその人の携帯番号(ドイツの番号)にかける場合、ドイツ国内の通話料はかけた人が負担します。しかし、国際ローミングをして、タイにるときにどの電話を受けてしまうと、ドイツからタイまでの国際電話料金は、受診した人(つまり、あなた)が負担することになります。ただし、もしも、あなたがその携帯からタイのローカルに電話をかけた場合は、タイのローカルの通話料を払うことになります。ちなみに、ここでいう通話料というのは、ドイツの携帯電話サービス事業者が設定している料金のことで、タイ側の携帯電話会社の料金設定とは違います。
さて、それでは、日本の旅行者の場合はどうか・・・。
日本は、以前はGSMに対応している携帯電話はほとんどなかったために、事前に手配しておけば、宅配便を使ったり、空港手渡しで海外で使えるGSM携帯電話をレンタルして国際ローミングするというサービスを使っていました。携帯電話の端末を交換すれば、先ほどのドイツの例と同じように、国際ローミングが利用できましたが、問題は、いちいち手続きをして、携帯電話をレンタルしていかなければならないことです。
現在では、日本でも第3世代の携帯電話になって、USIMというICカードを取り出せるようになってきたので、多くの携帯電話では、海外に行ったときGSM携帯電話を自分で用意して、そこに日本で使っているUSIMをさすと、国際ローミングできるようになってきています。
しかし、日本で使っている携帯電話を海外に持って行ってそのままローミングということは、あまり、まともにはできずにいました。
そんな日本の携帯電話の国際ローミングを変えてきたのがVodafone(現在のSoftbank)です。