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タイの民主主義

タイでは先月以来、反政府運動グループPAD(民主主義のための市民同盟)が、サマック首相の辞任を要求して、バンコクの首相府や衛星放送局、空港などを占拠したりしています。これに対してサマック首相は、今のところ、辞任の意思はないと言い、9月2日には非常事態宣言を出しました。

 

リアルタイムのニュースは、このブログに書いても仕方ないし、政治は僕の専門ではないので、あまり深く言及することはできません。それでも、急にタイ赴任が決まった人やその家族の方々などは、タイというところは、かなりキケンな国だと思われているかも知れないので、少しだけ、僕の印象を書いておきたいと思います。

 

2006年、タクシン元首相がニューヨークに行っている間に、バンコクでクーデターが起きました。その後、いろいろありましたが、2007年12月の下院選挙でPPP(人民の力党)が圧勝し、現在の政治体制ができてきています。しかし、このPPPには、タクシン元首相が設立したTRT(タイ愛国党)にいた元議員が大挙して入党したため、タクシン元首相の影響が強い政治体制であることが危惧されます。タクシン元首相は、今年2月にタイに帰国していましたが、汚職防止法違反容疑で訴追されおり、この裁判が公正に行われない可能性が高いとして、今年8月にイギリスに亡命してしまいました。

 

このように見てみると、やはり、いまだに政治の中心部にタクシン派の人間が多くいることから、それらを排除しようとする動きが、現在のPADの反政府運動のように見えますが、下院議員の7割を任命制にしろというPADの要求も、民主主義から考えると、理解しがたいことに映ります。

 

変な言い方ですが、タイでは、ときどきクーデターが起きています。

タイにとって政権交代が必要になるとクーデターが発生するようです。僕の友人が、「それじゃ民主主義じゃないじゃないか」と言っていましたが、確かに民主的な手続きではないと思います。タイは経済的には、もう「途上国ではない」と言っていますが、その政治的な意味では、まだまだ道半ばというところかと思います。

 

しかし、一般市民はまったくふつうに生活をしているようです。

あるタイ人の友人は、べつにたいして変わったことはないけど、自動車通勤のとき、迂回しなくてはならなくなり、通勤時間が増えたとぼやいていました。また、いま、タイに滞在している友人たちも、ほとんど平常時と同じだけど、そういえば、街中で軍人を多く見かけるということでした。

 

今回の騒動は、どのあたりで決着するのか、わかりません。なんとなく、最終的には王様の御意志といいますか、王様が認めた人の意見を国民も受け入れるのがタイ式ですから、今はそこに向けて利害関係者が動いているのかも知れません。でも、いつもいつも王様に頼っていては、本当の民主主義国家は作れないような気がします。王様は立派な方ですが、国民も政治家も、いつまでも王様にばかり頼らずに、しっかりした国の基盤を作っていって欲しいと思います。